2013年03月10日

アドゥリンの魔境・非公式サイドストーリー的なもの。

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アドゥリンの発売が楽しみなので、魔導剣士っぽい人のお話をちょっと書いてみたり。
攻略とかそういうものは全く関係ないので、創作系が苦手な方はスルーでお願いします。


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中の国の冒険者達がアドゥリンを目指す少し前の話だ。

ウルブカ大陸の片隅、アドゥリンから少し離れた場所にある密林地帯・ヤッセの狩り場。
昼間ながら辺りは暗く、湿った空気漂う林の中で、男がひとり、座り込んでいる。
近くには引き手を失い横倒しになった馬車と、無惨に散らばった積み荷。男は視線の先にあるものに震えていた。
「うっ……うわぁぁぁ!」
男は自分が置かれた絶望的な状況に堪えきれず、大声を上げた。暗い密林、獣たちのガサガサという草を分ける音がかすむくらいの悲鳴だ。
恐竜が二足歩行になったような化け物は荷物に気を取られる様子もなく、ゆっくりとした足取りで男に近づいてくる。
「やめろっ、来るな……! 来ないでくれ……!!」
懇願も空しく、化け物が足音とともに歩み寄る。息を吸って吐き、肩をわずかに上下させながら、表情ひとつ変える様子もなく男をじっと見つめている。
男は動けない。車を引いてきた愛鳥はとっくのとうにどこかに走り去ってしまった。
たまたま出先のセルビナで、異国風の男に声を掛けられたのが運の尽き。こんなことなら、アドゥリンになんて来るんじゃなかった。中の国でおとなしく商売を続けていれば良かったのだ、と後悔した。「冒険こそ、開拓こそ男のロマン!」と反対する妻を押し切り、意気揚々とバストゥークを後にしたあの時の自分がうらめしい。

男の後悔をよそに、あと三歩、というところまで化け物が近づく。
化け物のぎらりした瞳、吐く腐ったような臭い息が顔にかかる。生物が放つ独特の湿気が身体をなでまわす。太い右腕にはその身体にふさわしい蛮刀がぎらりと鈍く光る。
にもかかわらず、男は立ち上がれなかった。腰が抜けたというのは本当にこういうことなんだ、と悟り、一分後とも三分後ともつかない自分の惨たらしい姿が脳裏をよぎる。
化け物があと一歩の距離まで近づき、ゆっくりと凶器を振り上げた。
男は観念して目を瞑る。
−アルタナ様、せめて最期はひと思いに苦しまず……!

不意に、男の閉じた瞼の視界が真っ赤に染まる。
鼓膜が破れそうな爆音とともに男は吹き飛ばされ、数回転がったのちにどう、と地面に倒れ伏した。
自分に起きたことを確かめようとしたが、閃光のせいか目が開かない。
「悪いな。少しやりすぎた」
焦げた匂いが漂う中、低く通る声と共に、声の主の足音が近づいてくる。
「おっさん、行商人か。命拾いしたな」
「あ、あんたは……?」
「俺か? アルタナ様の使いってところだな」
「化け物はどうなったんだ」
「あぁ? さっき吹っ飛ばしちまったよ。派手にやったからな」
ようやく視界が落ち着いてきた。うっすら目を開くと、化け物のちぎれた足とおぼしき肉片が目の前に転がっており、焼け焦げた匂いがする。
「ありがとう、助かったよ。もう駄目だと思ったんだ。チョコボもどこかに行っちまった」
「そいつは災難だが、こんなところを独りで行くのは無茶だったな。おっさん、アドゥリンの人間じゃないだろう」
「分かるのか?」
「地元のヤツだったらこんな所は通らないさ。確かに最短距離だがな」
「そうだったのか……うかつだったな」
「ああ、まったくだ」

容赦のない言葉に男は思わず身体を起こし、目の前の声の主を見上げた。長身で銀髪の男。筋骨隆々と言うには線が細いが、眼光は鋭い。声の感じから若そうな印象を受ける。
「さっきの化け物をどうやって倒したんだ? あんた、魔道士には見えないが」
「ちょっと、こいつをな」
銀髪の男はにやりと笑うと、右手の指先で虚空に文字を描くような動作をした。すると、赤く光った文字がうっすらと浮かび上がる。見たことのない文字だ。
「それは何だ?」
「さあな。次に会ったら教えてやるよ」
最後に鈍くひと光りして、指先の文字が消える。
「じゃぁ俺は行く。人を待たせているんだ」
銀髪の男はそう言うとくるりと背を向けた。服装には中の国では見たことのないような装飾が施されており、加えて目についたのが背中の大剣。銀髪の男の身長には似つかわしくないくらいの大きさで、刀身には異国のものとおぼしき文字か文様が彫られている。
興味はあったが、危険だと分かった以上、ここには居られない。それに一人で置いて行かれてはたまらない、と慌てて男は立ち上がる。
「待ってくれ。独りでは心細いんだ」
「悪いが方向が違う。だが道は教えてやろう。いいか、ここから日の沈む方向に4〜5時間進むと開拓のキャンプがある。中の国からの者だと言えば粗略にはされないだろう。安心していい」
「こっちに行けばいいんだな?」
「ああ。ただし、わき目もふらずまっすぐ走れ。それと、これを持っていけ」
銀髪の剣士は小さな紙切れのようなものを懐から取り出し、手渡してきた。
「そいつは護符だ。球状の結界のようなもんで、少なくとも半日は持つ。この辺りはさっきの化け物の縄張りだからまたヤツらが現れるはずだが、結界があるうちは奴らも近寄れない」
「すまない。あんた、名前は? 礼がしたい」
「ガルティウスだ。いいから行け。礼はいい」
「わかった。ガルティウス、恩に着る」
男は気を取り直し、剣士に指差された方向を向き直ると銀髪の剣士に一礼し、走って行った。影が小さくなりかけたころ、光の玉が小さく見えた。護符を使ったらしい。

行商人の男が走り去るのを見届けた後、ガルティウスと名乗った男は背中の大剣を外し、地面に突き刺した。
「やれやれ」
行商人の男が残した荷物を覗き込み、樽からこぼれた異国の赤い果実をひとつ手に取りながら、荷物の中身をざっと改める。わざわざチョコボを使っていただけあって量が多い。すべて調べるのは骨が折れそうだ。
「ちょっと量が多いな。あとでおやっさんに頼むとするか」
ガルティウスはそう独りごちて、男に示した方向とは逆へ歩き始めた。赤い果実をほおばりながら。
「密かなる林の夢は禁断の味・・・なんてな」
湿った風が、密林を静かに通り抜けていった。


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多分続かず。



posted by 詩音 at 14:40| ■ 創作 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする